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「ちーちゃん、大丈夫だったー?懲りない奴等ねえ!」
「お義母さま!ご心配をおかけしました。ミオさん……とだんなさまが護ってくださったので」
「あいつらの元締めはわかってるんだけどねえ、そいつらも下請けなのよー。早く黒幕を突き止められるようにお父さんが頑張ってるから、もうちょっと辛抱してね?」
「他のお仕事もあるのに、ごめんなさい」
「ちーちゃんはうちのお嫁さんなんだから、そんなこと言わないのー!」
無事に帰宅すると、千雪は待ち構えていた母さんに撫でまわされる。
これも日課のようなものだ。
「トキくんもミオくんもよくがんばったわねー、おつかれさま」
「仕事だ、これも」
「あらあら!そうやって照れてる方が端から見たら恥ずかしいのよ〜?」
「…………チッ」
トキ兄は逃げるように自室へと向かった。
ぼくは、千雪の後に母さんから撫でてもらった。
「ミオさん、今日は本当にありがとうございました」
「気にしないでよ千雪。いつものことなんだから」
「ミオさんも怪我はありませんでしたか?」
「大丈夫大丈夫。それより千雪、今日はトキ兄に何かおいしいものでも作ってやってよ」
「……はい!」
一瞬きょとんとした千雪は、すぐに満面の笑みを浮かべて頷いた。
ほんと、本人たち以外には、好意だだ漏れなんだけどなあ。
とは言え、こんなわかりやすくて不器用な二人を見ているのはなんだかんだで楽しかったりする。
そして、どうにかちゃんとくっつけてやろう、なんて思ったりするのだ。
イバラ兄だって家族だからイバラ兄には悪いけど、千雪が好きなのはトキ兄なんだから、千雪の幸せのためにはトキ兄を応援しないとね。
「ミオちゃん、また襲撃受けたんだって?」
「イバラ兄。うん、そうだよ。いっぱいいて気持ち悪かったよ」
「気持ち悪いなら殺しちゃえばよかったのに」
「千雪の前で殺したら、トキ兄に怒られちゃうよ」
「千雪も血をたくさん見たら殺しにハマるはずだよ。好きなものは共有しないと」
「殺しが好きでやってるのはイバラ兄だけでしょ」
「ボクは自分も家族も殺しも大好きなんだ。好きなものが多い人間は幸せなんだよ?もちろん千雪のことは愛してるよ」
「まあ、イバラ兄は幸せだろうね」
うん、やっぱり千雪のためにはトキ兄を応援しようと思う。
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