殺し屋一家 | ナノ


▼ まあ、両想いです

「兄さん、千雪ちょうだい」

「千雪は俺の嫁だ!!!」


トキ兄は、ライバルの前ではわりと素直だ。

もちろん、千雪がいないときに限る。



イバラ兄はライバルといえるのかはわからないけれど、少なくともトキ兄はライバルだと思っている。

千雪はイバラ兄のことを全然相手にしていないけれど、イバラ兄はそれをものともせず千雪に迫り続けているからだ。


イバラ兄も悪い奴じゃないんだけれど、人を殺すのが大好きで本当は仕事でなくても殺しをやりたいと思っている。(家訓には背けないからやってないけど)

両親の命を殺し屋に奪われた千雪にとっては、そんなイバラ兄のことは受け入れ難いのだろうし、そもそもイバラ兄は千雪の話を聞かずにしつこく迫ってくる上にナルシストだから、ただただウザイのだろう。


だけどトキ兄はアホだから、自信満々のイバラ兄に内心戦々恐々としている。

イバラ兄の性格は知ってるだろうに。
まあ、イバラ兄が悪い奴じゃないと知っているからこそ不安なのかもしれないけれど。



「だってさぁ、兄さん、千雪と喧嘩ばっかりしてるじゃない?カリカリすると美容に良くないんだよ。兄さんといると千雪がブスになっちゃうよぉ?」

「なるわけねーだろ!最近あいつますますかわいいし」

「でもさぁ、かわいいって本人に言ってあげないと伝わらないんだよ?ボクなら毎日千雪にかわいいねって言ってあげるのに」

「好きでもない奴にかわいいって言われたって変わんねーよ」

「大丈夫だよ、兄さんと別れたらすぐにボクのこと好きになるから」

「別れねーし、ならねー!」

「でも兄さんが死んだら次はボクだよ」

「お前……ついに身内まで」

「家族を殺したいとは思ったことないよ。でも千雪は、最後にボクの手で人生のファナーレを飾ってあげたいと思ってるけど」

「……千雪に手出したら例えお前でもぶっ殺すからな?」

「トキ兄と殺り合うのはやだなぁ」



そんなやりとりを、ココアを飲みながら聞いている僕は、ひたすら呆れている。


イバラ兄に、じゃない。
イバラ兄はこんな奴だし、だいたい家族には手を出すわけがないから実害もないし、実害がなければ関係ない。


呆れているのは、トキ兄に対してだ。

この半分でも、本人に直接言ったらいいのに。


まあ、千雪なんか本人がいてもいなくても素直じゃないんだけど。

それでも千雪がトキ兄をどう思っているかなんて、加賀美家の全員(トキ兄以外)がわかっている。


端から見たら、実に滑稽な夫婦――つまりはお似合いの夫婦なのだ。


****



prev / next

back/top




「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -