草野球 | ナノ


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しかし今、草野球チームに所属する俺は、非常に目立っている。


『エラーの名手』として。


ノックで俺が暴投しないと、チームメイトから「おおー!」と歓声があがる。

試合の時には、相手チームの奴らから「サードに転がせばやるぞー!」と野次られるし、見物に来た近所のおっちゃんたちからは「今日も期待しとるよ!」なんてエールが飛んでくる。



念願の『目立つ存在』になれたはずなのだが、何かが違う。

いや、何もかもが違う。



一番予想外なのは、こんな何もかもが違う今の自分に、自分自身がけっこう満足しているということだ。

なんでだ、と思いながらも、休日にはいそいそとグランドへ走っていく俺がいる。

不思議だ。

俺はマゾなのか。


そういえば、よく考えてみたら、高校三年間も、全く目立ちもしなかったのに毎日練習に出ていた。

『華』とか『目立つ』なんていう言葉とは無縁だと、けっこう早くから気付いていたはずだ。

嫌ならやめればよかったのに、なぜか最後まで続けてしまった。


よこしまな理由で入部したのに、俺はあのころから、意外と野球が好きだったのかもしれない。

野球の方に好かれているとはとても思えないのに。


こうやって野球を続けてれば、いつか野球がこっち向いて笑ってくれるかなあ、なんて思ってみたりする。


………やっぱり俺はマゾなのだろうか。

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