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だけど、実際は『華』とは程遠い毎日だった。
初心者はまず基礎の基礎からみっちりやらされた。
当分ボールにさえ触れなかった。
この時点で、俺を含め三人いた初心者は、もう俺だけになってしまっていた。
やっとボールに触れる練習をさせてもらえるようになって、俺は気付いた。
サードって難しい。
ラインぎりぎりの当たりに、なかなか勇気を持ってとびつけない。
「切れてくれ」と思いながら、一瞬躊躇してしまうと、間に合わない。
ライン際を抜けていったら、だいたい長打コースだ。最悪なことになる。
おまけに、運よくボールを掴めたとしても、ファーストに送球するという大仕事が残っている。
俺はこれが一番苦手だった。
サードがいちばんファーストから遠い……なんて当然言い訳になるはずもなく、しょっちゅうあさっての方向にすっぽ抜けては、監督に怒鳴られた。
毎日、鬼のようなノックを受けつづけ、それでも一度も試合には出られずに、俺の野球部生活は終わった。
本当なら今頃、後輩の女の子たちが第二ボタン争奪戦を繰り広げてるはずだったんだけどなあ……と、卒業式の帰り道、ぼんやり考えていた。
少しのびてきた坊主頭を触り、「目立つのって難しいなあ」なんて呟いた記憶がある。
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