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なのに数年前、なんの因果かこの草野球チームに入り、また『4番・ファースト』の日々が始まった。
最初の試合、無安打だった。
あの日以来。
なんというか、そのおかげで今もこのチームにいるんじゃないかと思う。
今は、俺がたくさん打てば、それを見たくてあいつが帰ってくるんじゃないか…なんて思いながらやっている。
この考えが不健全なのだとしたら、『いつかあいつが別の誰かに生まれ変わって俺のバッティングを見に来てくれるんじゃないか』と言いかえてもいい。
とにかく、追われるように野球をしているより、楽しいことを待ちながら野球をしている方がずっと気持ちが軽い。
でもこれは、野球が好きということなのだろうか?
チームメイトたちは、本当に野球が好きなのがよくわかる。
俺は、あいつらからどう見えてるのかな?
大笑いされそうな気がするな、そんなこと聞いたら。
どうみても野球バカでしょ、とか言われるんだろうな。
そうだ、「野球バカ募集中」とかどうだろうか?ださいかな?
でも、生まれ変わったあいつが、俺に気付いてくれそうなフレーズだ。
チームの奴らが「ださい」なんて言ってきたら、俺にこの仕事を振ったお前らが悪いって言ってやればいい。
……いっそ手書きにしてやろうか。
それはやっぱやめとくか。
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(3/3)