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親友は、結果を聞いてもニコニコ笑っていた。
俺らしい、と言って。
自分が元気になったらホームランをまた見せてくれたらいい、せっかくなら自分の目で見たいじゃないか、と言って。
でも、親友は死んだ。
手術は成功したのに、だめだった。
親友が死んでから、俺のバッティングの調子が嘘みたいに上がってきた。
俺が薄情なのか、死んだあいつの気持ちがバットにのりうつってるのか。
いろいろ考えたけれど、親友は戻らないし、俺の調子はいい、単にそれだけのことだった。
なんとなく、調子を落としたらいけない気がして、狂ったように練習した。
地区での打率はいつも一位だった。
そのまま高校も野球が強いところに入って、ひたすら打った。
ここでも、誰もが俺を4番にふさわしいとほめたたえた。
最後の夏、ついにうちの高校は甲子園に行くことはなかった。
けれど俺は、ほっとしていた。
もう打たなくていい。
そこで俺はすっぱり野球をやめた。
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