▼
「あーあ、今日の先発タカハシさんじゃないんだ。残念」
「タカハシ好きなの。あんまり派手じゃないし、女の子が好きになりそうな投手じゃない気がするのに、意外だな」
「うるさいなー。サトウとかヤマモトとかたしかにかっこいいなあとは思うけど、タカハシさんがいちばん好きなんだからしかたないじゃない」
「どこが好きなの?」
「ん〜。投球フォームも好きだけど、…そうだな、素人みたいな答えかもしれないけど、雰囲気が好きかな。単純に」
「雰囲気」
「他の人より、空気が緩い気がするんだよね。タカハシさんが投げる時。こんな人がピッチャーなのかあって頼りなく思えてきそうなところで、ズバッと鋭い球投げたりして、夢中になる…っていうか」
「あー、言われてみればたしかに。よく見てるなあ」
「そりゃあ好きだからでしょ」
「でもさ、高校の頃は『ピッチャーが好きとかベタすぎるから絶対、好きなポジションはピッチャーとか言わない!』なんて言ってたじゃん」
「やめてよ、恥ずかしいな!あの頃はミーハーと思われたくなくて必死だったんだから!」
「ははは、ごめんごめん!」
「でも、タカハシさんが出てないときは、いつもナカムラを応援してるよ」
「レフトの?」
「うん。他のチームでも、ヤマダでしょ、ミヤモトに、ササキ、ムラタ、マツモト」
「全部レフト?」
「そう。高校時代だれかがしょっちゅうフライを落としてたせいで、ついレフトを目で追っちゃうくせがついた。そしたら好きな選手はみんなレフト。笑えるよね」
「失礼だな!そんなに落っことしてないだろ!?」
「しょっちゅう特守させられてたくせに」
「……それは否定しないけどさ」
「だって、あのときも…」
prev / next
(2/3)