アルバート31歳/ミリアム15歳 夏
少しずつ、暑さが和らいできた。
俺がミリアムに気持ちを伝え、ミリアムが受け入れてくれたのが夏のはじめ――その季節が、終わろうとしている。
二人の関係の、呼び名は変わったが、俺とミリアムはさして変わっていない。
いや、『さして変わらない』よう努力をしていると言った方が正しいだろうか。
俺がミリアムに惚れていることは事実で、ミリアムがまだ子供であることも事実だ。
世間から後ろ指を差されるかもしれない関係――それは構わないのだが、ミリアムを傷つけることだけはしたくなかった。
しかしミリアムは、何かを変えたいと思っているのかもしれない。
「アルバートさんっ!」
最近手に入れたソファで寛いでいると、帰宅したミリアムが背後から勢いよく抱き着いてきた。
「アルバートさんが一緒に選んでくれたブライトンさんへのプレゼント、とっても喜んでもらえました!アルバートさんのおかげです、ありがとうございます!」
ミリアムの職場の店主・ブライトンが誕生日らしく、先日俺はそのプレゼント選びに付き合った。
今日それを渡して来たらしい。
「ミリアムが世話になってる人だからな、役に立ててよかったよ」
巻き付けられた腕に手を添えて、俺は笑う。
「はいっ!アルバートさん、だからわたし、アルバートさんにお礼がしたいです。なにかないですかっ?」
至近距離で、ミリアムがこちらを覗き込む。
「……とりあえず、座れ」
自分の隣を、とん、と叩き、ミリアムを促した。
ミリアムはおとなしく、俺から離れてソファに腰掛ける。――離れて、と言っても抱き着かれていないというだけで、ソファに座る二人の距離はほとんどなかった。
それでも先程に比べればさして問題のない距離に、俺は少し安堵した。
「お礼なんてしなくていい。俺はミリアムが喜んでくれればそれでいいから」
「アルバートさん……でも、」
「俺がこんなことを言っても嘘くさいかもしれないけど、本当にそう思ってるよ。ミリアムが嬉しそうにしてるだけで俺も嬉しい」
そんな言葉がさらりと出て来た自分に内心驚いたが、それは本音だからこそだった。
「アルバートさん……」
ミリアムは感極まったように大きな瞳でこちらを見つめる。
「アルバートさん、だいすきで――――あっ」
言いかけて、突如ミリアムの言葉と動きが止まる。
また飛びつかれる、と構えていた俺は拍子抜けした。
「……どうした?」
ミリアムは、少し戸惑うように視線をさ迷わせ、口を開いた。
「わたし、いつもアルバートさんに『だいすき』って言っています」
「……?」
「小さい頃からずっとです。――でも、わたしたち、恋人、なんですよね?」
「……そうだな」
「いっしょなのは、もの足りないですか?」
いまひとつ、ミリアムの言いたいことが理解できなかった。
「何が?」
prev / next
(1/3)