▼ サンタクロース監禁事件
聖なる夜。
寝静まった町に、降り積もっていく雪。
夢の中にいる子どもたちは、微かな鈴の音に気づくことはない。
サンタクロースがやってきたのだ。
屋根にソリを停めると、煙突から家に入っていく。
寝室を探し当て、眠る少年のベッドに近づく。
小さく微笑んで、プレゼントの箱を枕元に――――
「動くな、撃つぞ」
「えっ!?」
突如、サンタクロースの背後に現れた長身の男が、彼女の背中に銃口を押し付けた。
――ここで訂正しておこう。正確には、彼女はサンタクロースではない。見習いである。サンタクロースは彼女の祖父なのだ。
「サンタクロース、捕獲完了」
サンタクロースは白い髭の老人である、という固定観念に惑わされることなく、まだあどけなさの残る少女を『サンタクロース』と呼んだ男は、少女の身体を縄で縛り上げた。
「騙されてのこのこやって来るとは、頭の軽い女だ」
男は、真夜中だというのにスーツを着ている。
縛り上げられたサンタクロースの少女は、そんな男を振り返り、叫んだ。
「騙されてってどういうこと!?この家はお父さんとお母さんと男の子の三人暮らしで……、」
「ふ……馬鹿め。お前たち、もう帰っていいぞ」
すると、いつの間にかベッドから降りていた少年と、いつの間にか部屋にいた母親が、泣きながら走り去っていった。
「ママー!こわかったよおおお……っ!」
「大丈夫よ、今日でやっとパパのところに帰れるからっ……」
「え……?」
「脅してこの半年家族のふりをさせていた。それもお前を捕まえるためだ」
「つ、捕まえてどうするの!?」
「お前を監禁して手籠めにする」
「!!??」
顔色を変えた少女に構うことなく、男は彼女を抱えて階下へ向かった。
****
「これまでに何人の子供の寝込みを襲った?このビッチ」
「びっ……!!??」
暗い地下室に少女を閉じ込めた男は、軽蔑の眼差しで彼女を見下ろした。
「何人の男の心を惑わせた。何がサンタクロースだ、この犯罪者め」
「犯罪者はあなたじゃ!?」
「いや、犯罪者はどう考えてもお前だ。そのふざけた格好からして犯罪者だ」
少女が身に纏っているのは、膝丈ほどのワンピース。色はもちろん赤色である。白い肌に映える金髪の頭上には、赤いとんがり帽子が乗っている。
赤いブーツとスカートの間から覗く脚を一瞥し、男は眉を潜めてため息をついた。
「これはおじいちゃんが作ってくれて……」
「好色爺が。楽をしたくて孫に仕事を押し付けるからこういうことになる」
「あたしがやりたいって言ったんです!」
「お前が?やはりビッチだな」
「違っ……!」
――と、何かに気づいたように、男は突然、天井を見渡した。
「おい、ビッチ、相棒のちんちくりんなトナカイはどうした」
「えっ、どうしてキヨシのこと知って……?」
「調べた」
「あなた一体……」
戸惑う少女。
その時。
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