短編そのた | ナノ


▼ 恋人ロボット

好きな人と両想いでいられることは、奇跡みたいな幸せだ。


だけど、相手が私を好きな気持ちよりもずっと、私の方が相手を好きだったら。



幸せが、増えた分だけ、不安になる。




『ロボットオタク』『アンドロイドが恋人』――私は、そんな風に周りから思われているらしい。


心外だ。


確かに、私は人工知能を搭載したアンドロイドを製作する研究所で、研究員として働いている。

いや、そんな言い方では弱いかもしれない。

アンドロイド研究一筋で、作り出してきたアンドロイドたちのことは自分の子供のように大切に思っていて――その結果、彼氏いない歴が25年になってしまった、残念な女だ。


では何が心外なのかと言えば、まず『ロボット』という呼称。

ロボットというのは、人間に似た働きをする人工物。機能性重視だ。

対してアンドロイドは、人間に極力似せることを目的とした人工物。

別物である。

これではまるで私がガン●ムオタクか何かのようではないか。


もうひとつ。

私の恋人は、人間だ。



彼氏いない歴に終止符を打ってくれた奇特な人物の名は、瀬川くん。

瀬川くんとは仕事の関係で知り合ったのだけれど、私の話を目を輝かせて聞いてくれて、そこから自然と仲良くなった。


友達として、一緒にいろいろなところに遊びに行って、瀬川くんはやっぱり私の話を楽しそうに聞いてくれて――ある日、告白された。


あまりにびっくりして『何で?』と尋ねた私に、『どこに連れて行っても、楽しいって笑ってるから』と、瀬川くんは答えた。

それは当たり前だ。今まで研究所と家の往復で、ろくに遊びに行ったこともなかったのだから、何を見たって、何をしたって新鮮で、楽しくてしかたがなかったのだから。

そうか、楽しい場所にはいつも瀬川くんがいたんだな、と、そんなことに気付いて、瀬川くんに告白されたことが嬉しくなって――瀬川くんと付き合うことを決めた。



アンドロイド一色だった私の生活が、一変した。

瀬川くんは、私に仕事を優先させてくれたけれど、彼自身は私を優先してくれた。

だから、一変した、というよりは、+αの幸せができた、という方が正しいかもしれない。

『恋人同士』のことなんて何も知らない私を、彼の全部で大事に大事にしてくれた。

それを受け取る私は、ほんとうに、幸せだったのだ。



なのに、いつのまにか。

時間は経って。


あ、私の方がきっと、瀬川くんのことを好きだ。


そう気付いてしまった瞬間に、今度こそ、世界が一変した。

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