短編そのた | ナノ


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彼が初めて私の家にやってきたのは、寒い冬の日だった。



一目見た瞬間から、私は、彼のすべてを自分のものにしたくてたまらなくなった。

いくつかの過去の恋とは、あきらかに違う気持ちだった。
もっと、燃えるような感情だ。



あなたには連続殺人の容疑がかけられている、と彼は言った。
状況証拠しかないが、あなたの周りでは人が死にすぎている、と。


たしかに、私の大好きだった人たちを殺したのは、私だと言える。

私が願ったから、彼らは死んだのだ。


けれど、そんなことを説明もできず、私はただ、わかりません、と答えるしかなかった。


彼は、また来ますと言って帰っていった。




それから、彼はたびたび私の家に来ては、私の大好きな人たちが死んだときのことを質問していった。

私はやはり、わかりませんと答えるしかなかったけれど、彼に会える時間はこの上なく幸せだった。



私は、自分が、異性の目にある程度魅力的に映ることを知っている。

そのうえ、私は彼に恋をしていた。


彼が、私のことを殺人犯だと疑いながらも、私に惹かれているのがわかった。


彼の、熱っぽく私を見る目も、殺人犯に恋をしてしまったことを苦悩する表情も、家から出る時の名残惜しそうな後ろ姿も、ぜんぶ、自分のものにしてしまいたかった。


だけど、全部は石に閉じ込められない。


それに、今、彼の何かを「欲しい」と思ってしまったら、これから先、見られるはずの彼を見られない。

そのときにもっと「欲しい」ところが見つかるかもしれないのに。



私は、どうしていいのかわからずに、彼と会い続けていた。



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