短編そのた | ナノ


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一月後の夜。
くらい空に花火があがった。

きっと、王子さまの結婚式。


王子さまは、まだあんなふうに思っているんだろうか。

だれも好きになれないなんて。

……わたしをお嫁さんにしたいって。



するとそのとき。

「うさぎのお嬢さん。魔法をかけてあげようか?」

しわがれ声にふりかえると、ふしぎな色のフードをかぶったおばあさんがにやにやと笑っていた。


あなたはだあれ?どうしてわたしに話しかけているの?

「あたしは魔女さ。魔女だからうさぎとも話せるんだよ。うさぎのお嬢さん、お城の王子さまのお嫁さんになりたいんだね?」

わたし、そんなこといちども言っていないわ。それにわたしは、うさぎだもの。

「だけど、王子さまにもういちど、会いたいんだろう?話がしたいんだね?そう、うさぎのままじゃ話もできないし、お嫁さんにもなれないよ」

話はしたいわ。……ほんとは、少しだけ、お嫁さんにも、なりたいけれど。

「だったらあたしが魔法をかけてあげよう。人間になる魔法だよ」

そんなことができるの?

「もちろんさ、魔女だからね。お嬢さんは真夜中までにお城に着いて、王子さまに会わなくちゃいけない。間に合えば人間として一生暮らしていける。つまりお嫁さんになれるね。ただし間に合わなかったら、魔法はとけるよ。そして王子さまのことも忘れる」

かんたんだわ。うさぎのあしははやいもの。

「人間は、そんなにぴょんぴょんと走れないんだよ?間に合うかね?」

………そうなの?


わたしは少しだけためらったけれど、魔女さんと話していたら、王子さまに会いたくて会いたくて、しかたがなくなってしまった。


いいえ、絶対に真夜中までにお城にいくわ。わたしを人間にしてちょうだい。

「そうかね、じゃあ目をつぶっておいで」


目をつぶると、きらっとなにかが光ったかんじがして、いっしゅん意識がなくなった。


「もういいよ」と言われて目をあけると、目のまえには魔女さんが出した鏡があって、そこにはみしらぬ女の子がうつっていた。

わたしがくびをかしげると、女の子もかしげる。

「これ、わたしなの?」

「そうだよ、うさぎのお嬢さん。かわいらしい女の子になったねえ」

わたしが自分をみおろすと、まっしろなドレスをきていた。

「人間のお嫁さんは、真っ白なドレスを着るんだよ。お嬢さんの毛の色だね」

「すごくきれい!ありがとう!」

「さあ、早くお行き。道はわかるね?」

「ええ、魔女さん、ありがとう!」


背中をとんと押され、わたしは走り出した。

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