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「のえるーーーっ!無事かっ!?」
木製のドアを尖った角が貫いた。
「ぬおっ!?抜けん!」
そして、ドアをバタバタと蹴る音。
「キヨシ!」
少女の叫びを聞いた男は、冷たく目を細め、ドアをガチャリと開けた。
「ギャッ!誰だオマエ!離せ!……あ、抜けた。やめろ!離せって!」
部屋に戻った男が片手でぶら下げていたのは、子犬くらいのサイズの、トナカイ。
角だけが異様に長い。
「キヨシ!大丈夫!?」
「のえる!なんだこの男!?ていうか何で縛られてんだ!?」
「あたしを監禁して手籠めにするんだって……」
「なにっ!?こいつヤベー奴か!?イケメンにはろくな奴がいねーな!だからオレはイケメンが嫌いなんだよ!離しやがれ!のえるを助けるんだ!」
ジタバタと暴れるトナカイを睨み付けた男は、ツカツカと壁の方に歩み寄った。
そして、
「ぎゃーっ!!!!折れ、」
壁に角を突き刺した。
「くっ!抜けねー!前足が短くて壁に届かねーし!」
「そこでおとなしくしていろ」
串刺し(と言えるのだろうか)にされたトナカイは、男に罵声を浴びせることはできても、少女を助けることはできなくなってしまった。
「邪魔者は排除した。観念しろ。お前は俺の所有物だ」
「やっ!ち、近づかないでください!」
「興奮しているくせに何を。このビッチが」
「何回ビッチ呼ばわりするんですか!」
「黙れ。お前はマゾだろう、ビッチビッチと罵られながら身体をまさぐられることに快感を覚える人種だろう」
「ちがいます!初対面のあたしの何がわかるんですか!」
「初対面じゃない」
「えっ……」
「いいからさっさとやらせろ。俺がどれだけこの日を待ったと思ってるんだ」
「やらせろってあなた、……っ!きゃああっ!離して!」
男は、少女の赤いブーツを右足から脱がしていく。
白い足があらわになっても、男は表情を変えない。
「やめろーーー!のえるを離せ!クソイケメン野郎!!!」
「黙れ鹿」
「トナカイだっ!だいたいお前、のえると初対面じゃないって一体どこで知り合ったんだよ!」
「言いたくない」
トナカイの叫びを一蹴した男は、「片足だけブーツを履いたままというのもそそるな」と呟きながら少女を眺めた。
その顔を見上げながら、少女は眉を潜めた。
「どこかで……見たような……」
こぼれた言葉に、男は顔をひきつらせた。
「すごく、昔……?思い出せな、」
「思い出さなくていい」
少女の言葉を遮る男。
「お前はただ見知らぬ男に犯されて興奮すればいい」
「い、いやあっ!!!」
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