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「お待ちなさい」
凛とした声が、皆の動きを止めた。
「ち、小さいおねえさま……」
声の主は、背筋をぴんと伸ばして真っ直ぐに王子たちを見据える、下の継姉。
「ふざけるのもいい加減にしていただける?」
それを聞いた王子と上の継姉…兄は、下の継姉に詰め寄った。
「ふざけてるですって!?あなたもあたしの気持ちは知っていたでしょう!?どれだけ本気か!」
「ええ。でもわたくしはお姉様とは違うの」
「私たちはシンデレラ姫を巡って闘っているのだ!きみには関係ないだろう!」
「シンデレラにも関係ありませんわ。だってどちらの嫁にもなりませんもの」
まさかの助け舟だ。
くだらない男の争いに呆れたのか、私が(望んでいないが)もてているのが癪なのか、ただの気まぐれかはわからないが、今の私にとっては救世主だ。
助かった、本当に。
「だってシンデレラは、わたくしの嫁になるんですもの」
――――はい???
「ま、まさか、下の姉君も、男!?」
「あなたの目はふしあななの?くそじじい。わたくしは女よ」
「し、しかし女性同士での結婚は、不可能ですぞ……」
「だから何?」
――――だからなに??????
「あ、あなたまでそんな世迷い言を……!」
「お母様は黙ってらして。わたくし、シンデレラを虐めてきたお母様を憎んでいるのよ」
呆然と立ち尽くす、私、王子、じじい、兄(元継姉)。
私を心から虐めていた継母がむしろ一番真っ当に見える。恐ろしい。
「き、きみはいつからシンデレラ姫のことを……?」
王子が再び的外れな質問を浴びせる。
「この子がここに来る前からです。親戚の子でね、まだ親が生きてる頃に一度会ったのですけど、その時から」
「その……あなたは女性しか愛せない方なのですか……?」
少し興奮気味にじじいが尋ねる。このじじいは一体何なのだろう。
「わたくしはシンデレラ以外好きになったことがないからわからないわ」
「あ、あなただってシンデレラを虐めていたでしょう!?まさかあなたまで好きな子をいじめたい主義だというの!?」
継母が縋り付くように叫ぶ。心中お察しします。
「わたくしやお姉様がシンデレラに優しくしたらお母様がシンデレラをここから追い出すだろうと思ったからよ。身を切る思いで虐めていたの」
――は、はあ、そうだったのですか。
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