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「なんでカズマ殿下はあんなにお強いんだろうって考えたら、それはやっぱり、リ…お妃様がいるからなんだなって思ったんです」
長丁場を覚悟していたのに、結局あの任務は、まる二日で完了してしまった。
本当に俺たちの出番はなくて、王宮に帰って賛辞を浴びても、なんだかしっくり来ないほどだった。
国王陛下を始め、待機していたたくさんの人たちから、任務の結果を聞かれ、賛辞を受け、それからカズマ殿下は俺たちに労いの言葉をかけてくれた。
『明日の稽古は免除だ』と。
そのまま、リン様の待つ部屋へと歩いて行ったカズマ殿下の後ろ姿は、なんだかもう、憧れなんていう言葉では表せないくらいだった。
「おおげさに聞こえるかもしれないけど、その時俺は、カズマ殿下に命を預けようと……捧げるんじゃなくて預けようと、思ったんです。だから、そんなカズマ殿下が大切に大切にしていらっしゃるリン様を、俺も本当に大切な存在だと思っています」
俺の言葉に、リン様が、目を見開く。
「あっ、すみません!今のはあまりにも無礼でした!申し訳ありません!」
はっと気付いて頭を下げる。
すると、肩にリン様の小さな手が触れた。
弾かれるように顔を上げると、リン様は笑っていた。
「違うんです。嬉しくて、そんな風に言ってもらえたことが。ちゃんと、カズマ殿下の妃として、この国の一員だと思ってもらえてるんだって。ありがとうございます、オルヴァさん」
「リン様……」
少し頬を染めて、相変わらず可愛らしく微笑むリン様に、俺の方がお礼を言いたくなる。
だけどうまく言葉が出てこない。
すると、ずっと黙って聞いていた先輩が、ふっと笑った。
「こいつの言うことは、少し礼儀知らずではありますが、私たち全員の気持ちですよ。お妃様」
リン様が先輩の方を向く。
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