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「ははっ、バレバレだな」
先輩もニヤニヤと笑う。
「俺、出てます…?」
「自分が思ってるよりは出てる」
先輩にもそう思われていたのか。
前に『器用なのに詰めが甘い』とか言われたこともあった。
だんだん恥ずかしくなってくる。
そんな俺の様子を見て、リン様はくすくすと笑った。
「だけど、そう言ってたときの殿下はちょっと楽しそうだったから、きっととても大切な部下なんだなって思ったんです」
「え……」
『楽しそうな殿下』というのが想像の枠を越えていたけれど、今、すごいことを言われた気がした。
さらにリン様はにこにこしながら言葉を続ける。
「私がここに来たのと同じくらいの時期に、オルヴァさんも入隊したんだって聞いて、実は勝手に親近感がわいてたんです。今日お話できてよかった」
「う、うわあああっ!そんなおそれおおいです!親近感だなんて!」
今度こそ俺は頭が爆発しそうになった。
さっきから、衝撃的な言葉の連続で、目の前がチカチカする。
だって、主であるカズマ殿下の溺愛するお妃様に『親近感』なんて言われてしまったのだ。
カズマ殿下が知ったら『その言葉は忘れろ』なんて耳を削ぎ落しにかかる……ことはさすがにないか。
とにかく、今日を記念日にしてもいいくらいの衝撃だった。
リン様は、そんなすごいことを言った自覚は全然ないようで、楽しそうな表情で首を振った。
「そんなことないですよ。私もカズマ様に『頭の中がバレバレだ』ってよく言われるから、同じです」
あ、二人の時は『カズマ様』って呼んでるんだな、と俺は余計なことに気付く。
今、『カズマ様』と言ったときのリン様の表情はすごくやわらかくて、それだけで二人がお互いを大好きなんだなとわかってしまうくらいだった。
なるほど、確かにリン様も顔に出るタイプなのかもしれない。
そんなことを考えていると、ふいにリン様が何かに気付いたような表情になった。
「……あ、休憩のお邪魔しちゃいけないのでそろそろ戻りますね。殿下によろしくお伝えください」
おそらく、腰を下ろしてくつろいでいる仲間たちの中で、姿勢を正して立っている俺と先輩に、気を遣ってくれたのだろう。
だけど。
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