▼
「ここ、怖いとこじゃない気がするから。それに、二週間経ったら帰れるんでしょう?」
そう答えると、男の人はにこっと笑った。
「そっか。うん、なかなか強い子だ!」
満足そうに一人で頷く。
そしてすっと立ち上がった。
「よし、じゃあせっかくだから、二週間、こっちの森を案内してあげよう。俺はナオって皆に呼ばれてるからそう呼んで。きみの名前は?」
「私、アキ。こっちの森って広いの?人は住んでるの?」
私は、もう家のことはほとんど忘れて、『こっちの森』のことに夢中になっていた。
ナオは、
「森はすごく広いから、ぼくが知ってるとこなんてほんの一部だよ。人はきみしかいない。いろんなものがいるけどね」
そう言って、私の手をとった。
手がひんやりする。
「まずはぼくの家に行こうか。お腹すいたでしょう?」
prev / next
(3/18)