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「お前はさ、捕れないボールだからって諦めたり、届かないかもしれない距離だからって走らなかったりさ、そんなプレーは絶対しないよな。
それって、馬鹿みたいに野球が好きだからだろ？お前が。
好きなことだから、思いっきりぶつかっていってさ、それで負けても後悔しないってくらいの真っ向勝負をしてんだろ？
今、お前はユニホーム汚すのが怖くて、ボールが捕れないのが怖くて、棒立ちになってるんじゃねえのか？
それって、そんなに好きじゃないってことだろ。そんなもんなわけ？」
『好きだからこそ臆病になる』
それは確かに真理だと思うが、こいつにそんなのが似合うわけがない。
何回も何回も、ボールをひたすら追っかけて、やっと追い付いて、最高の笑顔を見せる。
そういうのが、似合ってる。
本当は少しうらやましいから、こいつにはそういうところをなくしてほしくない。
そう思った。
「そんなもんじゃ………ない」
『目からウロコ』といった表情で、こちらを見て呟く相棒。
今、俺はすごく陳腐で恥ずかしいことを言った気がするのに、こいつは笑いもしない。
逆に恥ずかしいじゃねえか、とも思うが、本当にこいつの心に響いたらしい。なんだかさっきと目つきが違うから。
「野球に例えなきゃピンと来ないなんて、ほんっとしょうがねえ奴だな、お前」
俺は苦笑する。
意外と頑固なこいつの、何かを動かせたことが誇らしくもあり、それがあまりに使い古された言葉だったことが少し照れくさくもあり、野球の力を借りないとこいつを動かせないことがちょっと情けなくもあり。
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