▼
それにしたって、と思う。
「お前、あまりにもじれったすぎるんじゃねえ?何ヶ月この状態だよ」
試合前ノックが終わり、ベンチに引き揚げながら言う。
あのこはグランドを見つめ、こいつはあのこに笑顔を向ける。
それだけの関係が数カ月。
お前たちは本当に現代人か、と疑いたくなる。
「うん」
こいつにあのこのことを聞くと、いつも短い返事しか返ってこない。
だいたい「うん」じゃ答えになっていないというのに。
俺も、特にお節介というわけじゃない。
だけどなんというか、こいつらを見ていたらもどかしくて仕方なくて、柄にもなく口を出したくなってしまうのだ。
「なんか考えがあるわけ?」
ベンチに戻って汗をふきながら、さらに口を出す。
何かもう、むきになっているのかもしれない。
prev / next
(2/5)