草野球 アナザー | ナノ


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だけど、相手投手がマウンドに上がらなかったから、勝ちを手にすることができたのかもしれない。

付き合い始めたあの頃に、彼にマウンドに上がられていたら、勝ち投手は彼だったかもしれないのにな、とぼんやり考える。


妻を信じていなかったわけではなくて、彼が本気で奪いに来たら、勝てる自信がなかったのだ。


『エースになれたら』というのは知らなかったけど、彼が何か理由があって妻の友人を演じ続けている気がしていたから、それが続けばいいと願っていた。

高校時代は正直ビクビクしながら妻と付き合っていたように思う。


「あなたが私を好きなことも、私があなたを好きなことも、気付いてたって言うのよ。好きだったから、って」


同じように、僕も気付いていた。

だから、怖かった。
人間的にも、僕は彼にひそかに好感を持っていた……、からこそ。



もちろん、今はもう結婚しているし、そんな不安はない。

それでも、彼は自分の決意を果たして妻に告白した。



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