草野球 アナザー | ナノ


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そうこうしているうちに、好きだった女は別の男と付き合い始め、あいつと彼女も別れていた。

今は、新しい彼女がいるらしい。


俺は不器用なのか、そんなふうにめまぐるしく変わる人間関係に着いて行けない。

好きだった女を、簡単に忘れることもできない。


そして、他に取り柄もないから、ひたすら仕事に打ち込む毎日だ。


だが、あいつは、仕事を完全に『日々の糧を得るための手段』と考えている。

だから、めちゃくちゃな残業もしないし、『仕事人間』という言葉は全くあてはまらない。

それでもあいつは、俺なんかよりよっぽど、仕事をそつなくこなす。

働くために生きているかのような生活をしている俺なんかよりも。



野球をしているあいつを見てからわかったことだが、おそらくあいつは、できるだけ野球に夢中になれる環境を作るために、地盤を固めているのだ。

仕事人間に見えないのは、他の夢中になれるもの――野球にひたすら気持ちが向いているからで、決して仕事に手を抜いているわけではない。

そして仕事に手を抜かないのもすべては、野球をめいっぱいしていたいから。


夢中になれるものがある、それは間違いなく、あいつの強みだ。


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