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その後のお前は、俺のためでも、ましてや自分のためでもなく、義務感みたいに野球を続けていた。
高校卒業までやめないことが、無安打の懺悔になるとでも思っていたのか。
お前が卒業と同時に野球をやめたことに、安心してしまった俺の気持ちが、わかるだろうか。
お前の野球が大好きだったのに、お前が野球をしなくなって安心するなんて。
だから、お前がまた野球を始めて、俺は不安に思ったんだ。
お前はもう、野球とは関わらずに生きていくんだと思っていたから。
だけど、そんなんじゃなかった。
やっぱりお前は『野球バカ』だった。
お前をチームに誘った人が、何て言ったのかは知らないけれど、お前は、やりたくてまた野球を始めたんだよな。
俺以外に、野球をしたい仲間を見つけてしまったのは、ちょっとだけ寂しくはあったけれど、それ以上に、すごく嬉しかった。
また俺が「お前の野球が好きだ」と胸を張って言える日が来たんだから。
今までは、「お前がこっちに来たら、謝って、それから殴ってやる」って思いながら、お前を待っていた。
だけど今は、早く生まれ変わって、またお前と野球がしたいと思っているんだ。
その時は、もうちょっと野球がうまい奴になりたいな。
それでお前に、このチームに入ることにした理由とかを聞いてみたいからさ、もう野球やめたりすんなよな。
待ってろよ、さっさと生まれ変わってやるから。
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