草野球 アナザー | ナノ


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思えば、俺の手術の前に、「次の試合でホームランを打つ」って言った時から、お前は野球が楽しくなくなってしまったんじゃないだろうか。


『誰かのために野球をする』、その中には『その人のために野球をしたい』という自分の意志も、本当は含まれているはずで。

だから、誰かのためっていうのは、自分のためでもあるのが、普通なんだ。


だけど、お前は、野球が好きなくせにあの頃、野球をしたくないと思っていた。

うぬぼれてるみたいだけど、俺がいない野球部なんてつまらないと思ってくれて。


だけど、『俺のため』に野球をして、ホームランを打つとまで宣言した。

気持ちが嬉しくて、頷いてしまったけれど、本当は胸が痛かったんだ。

そこに、お前の『自分のため』が見つけられないような気がして。



だから、無安打だと聞いて「お前らしい」と笑った。

野球バカのお前が、自分の意志を無視して他人のためだけに野球をしたら、そりゃあこうなるよ。

そう思ったんだ。



それからしばらくして、俺は死んだ。



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