草野球 アナザー | ナノ


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だけど昔、お父さんとお兄ちゃんが話しているのを聞いたことがある。


「お前、いいかげん結婚しろよ。このままだとうちの娘が『お兄ちゃんのお嫁さんになる』ってのを、本気で言い始めちまうぞ?」

小さい頃、私はお父さんではなく、お兄ちゃんのお嫁さんになると宣言していた、と聞いたことがあった。


お兄ちゃんは、結婚のことには触れずに、

「こんなおっさん、むこうが願い下げでしょう。心配する必要ないっすよ」

そう答えていた。




お兄ちゃんは?

お兄ちゃんも、私を『願い下げ』なのかな。

それは、聞かないことにしている。


だって、今の状況を動かさないのは、お兄ちゃんだから。

いくらでも私を遠ざける方法なんてあるのに。


それがお兄ちゃんの優しさだとはわかっているけれど。



もうしばらくは、その優しさに甘えていたい。

そして、贅沢すぎる願いをこっそり胸にしまっておくことくらいは、許してほしい。



お兄ちゃんが嫌になるまででいいから、私の『大好きなお兄ちゃん』でいてね。



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