▼ 02:夫に関するいくつかの考察
私がこの国の王子であるカズマ殿下に嫁いで、約一月が経った。
彼は、漆黒の髪に漆黒の瞳をたたえた、美しくも力強い風貌をしている。
彼が『性格に難あり』と言われている所以は、自信家で偉そうなところと、無愛想なところにあるとわかった。
彼は、剣の腕も並の兵士たちより断然上だった。
彼に勝てるのは、彼の師匠であるカザミ将軍だけだという。
それに加えてあの完璧な容姿だから、自信家になるなという方が無理な話ではある。
しかし、彼の剣技を見て私が「すごいですね!」と言っても、ちらりとこちらを見ただけで「当然だ」と言い捨てて去っていかれると、
かわいくない!
なんて思ってしまう。
彼がうやうやしい態度を取るのは、先にあげたカザミ将軍と父親である王様にだけだ。
その王様は、穏やかな人柄だが、仕事となると容赦がないらしい。
父親のそういうところを色濃く受け継いだのだろうか。
ひとつ意外だったのが、城で働く人々にとって、彼のそんな態度が、私の元に届いた噂のように『難あり』とは映っていないことだった。
むしろ、憧れの的と化している。
女官たちは、キャーキャーと騒いだりして。もちろん彼は無視しているが。
慣れない国へ来て嫁いだ相手が、自分との結婚を望んでいたと言ったくせに態度が冷淡で、怒りを含んだ戸惑いを感じている私にとっては、首を傾げたいところだ。
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