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▼ 16:危険な任務


先日、ミサキ兄さまが盗賊に襲われた一件で、周辺各国が王宮に集まり、会議が行われていた。

兄を襲った盗賊は、ある民族の者たちであることがわかっていた。

彼らは長年、この周辺の国々を悩ませてきた民族である。

私たちとは文化も風俗も異なる暮らしをしている彼らは、私たちの考えるところの『国』という枠に縛られず、各地に少人数ずつ固まって暮らしているという。

そんな理由もあり、彼らにはつねに、モノが不足している。

そのような事情から、盗賊行為をはたらく者が絶えず、各国で多くの被害が報告されていた。

彼らの考えでは、盗賊行為は生きるために必要なこと、とされているらしく、その手口には容赦がない。


そんな彼らに、ついに一国の王子までもが襲われ、各国の首脳たちは怒りに燃えていた。

民族討伐の意見が大半を占めた。


しかし、そこで彼が突然、口を開いた。

「我が国としては、彼らと協定を結びたいと考えている」


そんなことは不可能だし、危険すぎると皆、一斉に反対した。

彼らは、『弱い者で群れている』私たちを、毛嫌いしているという。

以前、盗賊行為をやめるよう首長に面会に行ったある国の宰相は、殺されたと聞く。


だが彼は、不敵に言った。

「私に任せていただければ、一滴の血も流さず最短の時間で彼らと条約を結んで戻って参りましょう」


私たちの国は、国土の広さや環境、軍事力などにおいて周辺各国を圧倒しており、支配はしていないが、他国を牽引し保護する立場にある。

そんなこの国が、彼らと協定を結べば、他国の安全も保障される。


「あのカズマ王子がそう言うのなら」と、この件は彼に全て託された。



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