my beloved | ナノ


▼ 15:好きです


めずらしく、私より先に彼が部屋に帰ってきていた。

くつろいだ様子でソファに座っている。



――と、私が部屋の扉を閉めた瞬間、彼が立ち上がった。

あれ、と思う間に、彼は扉に両手をついて私の動きを封じる。



そして彼は、少し怒った声で。

「お前から言えと言ったはずだが」



何のことか理解した瞬間に、頭が真っ白になった。



『お前がいずれ、俺に惚れたら、お前から言え』

初夜に下された命令。



……何で、わかったの?

彼は心が読めるのだろうか。

少し前に自覚したばかりで、私はそんなに態度に出していただろうか。


どちらにせよ、彼が私の気持ちに気付いていることは間違いなかった。



真っ白になっていた頭が、今度はくらくらしてくる。

恥ずかしい。
こんな距離で動きを封じられて、わかっているはずの気持ちを「言え」だなんて。


最近、なんだか態度がやわらかい気がしていたのは、この前触れだったのだろうか。



私を恥ずかしくさせるのは、彼の得意技。そして、私を好きでいてくれているという、証。


だから本当は、私だって言ってしまいたい。


――――でも、


「……言ってしまったら、『その先』が怖い、です」

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