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▼ 55:会議のあと(1)


ある日の夜。

夕食の席に現れたのは、王様ひとりだった。


「カズマは武官たちといろいろ調整しなきゃいけないことがあるらしいから、先に食べてようか」



夕方まで、彼が昼間出席した他国での会議の内容を持ち帰り、それについての話し合いが行われていた。

内容によっては私が参加することもあるけれど、今回はそうではなかった。


「カズマ様、お疲れでしたか?」

「んー、カズマはイリヤくんと会うと心底嫌そうな顔で帰ってくるからねー。まあ、リンさんが嫌なこと忘れさせてやってよ」


そう。とある懸案に関して西の国と協力関係を結んだ私たちは、かの国との関わりも当然、深くなった。

他国を含めたさまざまな会議で、彼はイリヤ王子としょっちゅう顔を合わせなければならないのだった。


「私がちょっとお説教もしちゃったしね」

そう言って、にこりと笑う王様。

「お説教、ですか……」

「余計なお世話だったかもしれないけど」


よほどのことがないかぎり、王様は彼のすることに口を出さない。

私は、何があったのだろうと眉を潜めた。


「いや、何があったわけでもないんだよ。ただね、ずっと見てると心配になってね」


話が見えず首を傾げると、王様はワインを一口飲んでから手を置いた。


「カズマがあの子を意識する必要なんてないはずなんだよ、本来は」


予想していなかったわけではないけれど、イリヤ王子に関することだった。


「親の欲目もあるかもしれないけど、カズマは優秀だよ。政治に携わるには甘すぎるところがあるけれど、それでもそこから足元を掬われないくらいには、優秀だ」


私には『フェア』だと映る彼は、王様からすれば『甘すぎる』ということになるらしい。

それでも、王様が『王子』としての彼を認めていることはわかった。


「対してあの子は、能力はあるけれど、愚かで短絡的だ。この間の件なんて特にそうだね。ああいう子は、こちらが相手にしなくても、勝手に自滅する。以前もそんなことがあったしね」

王様の眼が、すっと冷たくなった。

「欲しいもののためには手段を選ばないし、そういう行動が許される甘やかされた立場にいるからこそ、周囲はあの子を警戒する」


王様は、イリヤ王子の父――つまり西の国の国王とも、もちろん面識がある。

以前『私とはあまり話が合いそうにない人だったよ』と教えてくれたことがあった。

そんな父親に、あのひとがどんな風に育てられたのかは知らない。

イリヤ王子のやることに国王は口出しできないと噂を聞いたこともある。国王は、イリヤ王子のわがままの後始末と根回しばかりしているとも。

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