my beloved | ナノ


▼ 30:honey moon (4)


宮殿の近くにある岬には、『恋人同士で夕日を見ると永遠に結ばれる』という伝説があるらしい。


その話を彼の口から聞いた私は、目をまるくした。

「カズマ様、そういうの興味なさそうなのに……というかどこで聞いてきたんですか、そんなの」

「俺は別に興味はない。お前が好きそうだと思っただけだ。街で女たちが話しているのがたまたま聞こえた」


すると、給仕をしてくれていたマリカさんが話に入る。
今は三日間の朝食中で、私たちは今日の予定を考えているところだった。


「それ、昔からある伝説らしいですわ。夕日が海に沈む瞬間を一緒に見ると、永遠に結ばれると。地元民には超有名ですわ!」

ミーハーなマリカさんは当然その伝説を知っていて、目を輝かせながら教えてくれた。


「観光地のわりにはなぜか観光客にはあまり広まっていない伝説なんです。だから運がよければ貸し切りで夕日が見られますわよ!」


「へええ……!」

私もマリカさんのようにミーハーではないけれどやっぱり一応は女の子だ。そういうロマンチックな伝説が新婚旅行先にあると聞けば、興味が湧くくらいには。

それに、海に沈む夕日はきっとすごく綺麗だろうから、純粋に見てみたいと思った。


「岬へ続く道はここと本当に目と鼻の先ですわ。ただちょっと森の中を歩かなきゃいけないみたいですけど……動きやすい服はご用意してますわよ」

マリカさんが両手を合わせてにこにこと笑う。


「行きたいか?」

彼が尋ねる。
答えはわかっている、というようにいたずらっぽく笑いながら。


「はいっ!行きたいです!」

そして当然、私も頷いた。



昼間は、再び海を見ながらのんびり過ごし、夕日に間に合うように岬へと向かうことになった。

『新婚旅行』というにはすごくささやかな日々だけれど、私にはとても特別な時間だと思えた。



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