▼ 28:honey moon (2)
南の宮殿には、私の方が早く着いた。
「わあああっ……綺麗!」
バルコニーから見える海は、青いのに透明で、眩しくて、本当に綺麗。
「絵で見た海と全然違います!」
「リンさまの地方は北の海ですからもっと深い青色ですね。こちらはあたたかいから海もこんな色なんですよ」
マリカさんが笑顔で説明してくれる。
私たちの国は内陸にあったため実物を見たことはなかったけれど、『海』のイメージは美しさと厳しさ――怖さのようなものも混じっていた。
だけどここの海は、厳しさや怖さを全く連想させない。『楽園』と呼ぶにふさわしい雰囲気だった。
「うう〜、早く行きたいっ!」
あの真っ白な砂浜や寄せ返す波に、実際に触れてみたい。
だけど我慢しなければならない。
せっかくの海なのだから、彼が到着してから一緒に楽しまないと意味がない。
そうやってバルコニーでしばらく海を眺め続けていると、やっと彼が到着した。
「お帰りなさい、カズマ様!」
「ああ、海は気に入ったか?」
彼の言葉に私は大きく頷いた。
「はいっ!こんな綺麗な景色、初めて見ました!」
彼は満足そうな表情で、
「そうか。砂浜まで出てみるか?」
再び頷きかけて、私はふと気付いた。
ためらいがちに尋ねる。
「でもカズマ様、お仕事の後で疲れてませんか?少し休んでからでも……」
彼は無表情に言った。
「あの程度で疲れるか。だいたいそんなにうずうずしてたら行きたいのがバレバレだ。ほら、行くぞ」
私の腕を引いて、部屋を出る。
そんなに私は待ち切れない顔をしていたのだろうか、と少し恥ずかしくなった。
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