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「もういい。全部、俺が選んだことだ。お前はそのままでいろ」
「カズマ様、でも……」
言いかけたところで、彼が視線で私の言葉を遮った。
そして、私に一歩近付き、言った。
「ちゃんと自制するから、触れてもいいか」
こちらをまっすぐに見つめたまま、そんな風に言われたら、誘導されているみたいに頷くことしかできない。
「……は、はい」
彼の指が、熱をもった私の頬に触れた。
そして、額に、まぶたに、それから頬に、くちづけが落とされる。
さっきみたいな強引さは全くなくて、びっくりするくらい優しく触れられているのに、さっきと同じくらいぞくぞくした。
そして、
「……好きだ」
最後に私の指にキスをしながら、彼が囁いた。
はっきりとその言葉を言われたのは、初めてだった。
それだけで、私はくらくらして、頭の芯から溶けてしまいそうになる。
何も言えずにぼうっと立ち尽くす私を見て、彼は少し困ったように笑った。
そして、壊れ物を扱うようにふわりと、私を自分の胸に抱き寄せた。
――どうやって、こんな無条件の愛情にこたえていけばいいのだろうか。
「そのままでいろ」と彼は言ったけれど、このひとに何かを与えられるような自分になりたいと、私は強く思った。
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