my beloved | ナノ


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「……悪かった」

廊下へ出ると、彼が立ち止まってつぶやいた。苦い表情になっている。


「自分が過保護なのは自覚してる。ただ、お前があまりに煽るから、我慢がきかなくなった。……怖がらせて悪かった」


謝るはずだったのに、先に謝られてしまい、私は慌てた。

「ち、違うんです!私が……私が大事にされてることに甘えすぎて、カズマ様を不安にさせてることに気付かなくて……わがままでした。ごめんなさい」

それに、『怖い』というのとは少し違った気がする――けれど、それは何となく言えなかった。


「俺が甘やかしてるんだ。……確かに、不安がないと言ったら、嘘になる」

彼は私から目を逸らし、言いにくそうに話し始める。

「そんなに……綺麗で、他の奴にどんな風に映ってるのかと思うと――俺みたいな目でお前を見る奴がいるんじゃないかと思うと、お前を放り出す気になんてとてもなれなかった」

そんな人いるわけありません、と言おうとしたけれど、彼はさらに言葉を続けた。

「結局は、俺がお前を欲しい気持ちを抑えきれなかっただけの話だ。だからお前は悪くない」


……私の記憶とは違う喧嘩のことなんじゃないだろうかと思ってしまう。
そんな話じゃなかったはずなのに。


それに、さっきから『綺麗』とか『欲しい』とか、さりげなくあまい言葉を続けざまに言われて、顔が熱くなる。

綺麗だなんて、色気のない私をそんな風に思う人は、彼くらいだと思う。それをさも当然のことのように言われると、戸惑ってしまうし、恥ずかしい。


それを隠すように俯いたまま、私は首を振った。

「……でも『子ども扱い』なんて、思ってもないことを言ってしまいました」


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