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アオイ兄さまは、私を指差して言った。
「実際お前は子どもなんだよ。だからカズマどのは待ってくれてるんだ。それを『子どもじゃない』なんて言われて、むこうからしたら、おあずけくらってるエサに『何で私を食べないんですか』って言われたようなもんだ」
「私はそんなつもりで言ったんじゃ……」
「そうだ、自覚なしにそんなこと言ったからカズマどのが怒ったんだろ。お好きな女と毎晩一緒に寝てて何もできない男の気持ちをわかれとは言わないけどな、過保護になるくらいお前が大事なんだってことはわかってやれよ」
「……」
わかっている、つもりだった。
大事にされている。だけど、私は頼りなく見えているんじゃないかと、不安になっていた。
「だいたいな、お前を信頼していないから一人にしない、なんて思うのはカズマどのに対して失礼だろうが。彼はそんな奴じゃないだろ?」
兄さまは、私の心を読んだように言った。
「わかりやすく言うとだな、自分がいない間に他の男と楽しく談笑なんかされたらおもしろくないだろうが。つまりただの独占欲とやきもちだ。大人げなさなら、カズマどのも相当だけどな」
そこまで言われて、私はやっと理解した。
私も、彼が仕事とはいえ綺麗なお姫様たちに囲まれていると不安だった。
それは彼の気持ちを疑うこととは全く別のことで、単純に『嫌』だった。
そうか、私が嫌だと思うことは当然、彼も嫌なのだ。
彼を不安にさせていることにも気付かずに、自分のことばかりを主張して……彼が怒るのも無理はなかった。
おまけに、待ってもらっている身で『子ども扱いするな』なんて、甘えたことを言って。
「……私、謝らなきゃ」
私が立ち上がると、兄さまは笑った。
「犬も食わない、ってやつだとわかったか?」
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