my beloved | ナノ


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人の来ないバルコニーで座り込んでいると、ふいに後ろから声をかけられた。

「探したぞ、リン」

振り返ると、呆れ顔で立っていたのはアオイ兄さま。

「兄さま……なんで?」

目をまるくすると、兄さまは無造作な動きで私の前にしゃがみ込んだ。

「カズマどのに頼まれた。お前、カズマどのと喧嘩したんだって?」

「……に、兄さまあ〜〜!」

私は泣きべそをかきながら、アオイ兄さまに事情を話した。結婚してからの『事情』も含めて。

同性のきょうだいがいない私にとって、家族の中ではアオイ兄さまが何でも打ち明けられる唯一の相手だった。母やミサキ兄さまはなんというか……騒がしいのだ。アオイ兄さまは恥ずかしいことを打ち明けても冷静で、からかうようなこともしない。


――私が一通り話し終わると、アオイ兄さまはため息をつき、きっぱりと言った。

「それはお前が悪い」

「えっ……、な、なんで」

予想外の反応――しかも断言までされてしまい、私は戸惑う。

兄さまは、さらにため息をついた。

「カズマどのはお前が誰かにとられやしないかと不安なんだろ。お前たちを繋ぐものは『結婚してる』って事実だけだしな。そんな状態で『子ども扱いするな』なんて言われたら、そりゃ襲うかもな」

「い、意味がわからない……それに、私はカズマ様の妻なのに、誰かにとられるなんて……」

全く話が見えてこない。
私は、彼に好きだとはっきり言っているのに。私が浮気心を出さない限り『誰かにとられる』なんてことは起こるはずがなくて、もちろん私は彼しか見えていないのだから、やっぱりありえないことで。


兄さまは、そんな私を見て苦笑した。

「確かにカズマどのも心配性すぎるけどな。お前みたいな色気ない女に欲情するのは彼くらいだろうに」

「し、失礼な!それによ、欲……そんな身も蓋もない言い方……」

さっきのことを思い出して顔が熱くなる。まだ、彼に触れられた感触が残っているような気がした。



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