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朝起きると、隣に彼がいなかった。
もう起きたのかと、居間へ出てみると、彼がソファの上でまるくなっている。
「か、カズマ様!?なんで……」
思わず大きい声を出してしまい、そのせいで彼を起こしてしまった。
「ああ、おはよう……」
彼が眠そうに目をこする。
「カズマ様、なんでこっちで寝てるんですか!?それにそんな薄い毛布で……」
私が慌てて彼に近寄ると、彼は目をそらした。
「……あの状況で平然と寝室にいられる奴がいると思うか、馬鹿」
「え?」
あの状況って……と記憶を呼び起こすと、とんでもなく恥ずかしい台詞を言った自分がおぼろげに思い出される。
「ご、ごめんなさい……」
私が真っ赤になって謝ると、
「謝ることじゃない。お前が寝ぼけていたから自制できた」
そう答える彼の顔も赤かった。
……彼が恥ずかしくて真っ赤になるなんてことはありえない。
まさか、と嫌な予感がして、私は彼の額に手を当てた。
「カズマ様!ね、熱がすごいです!」
彼が昨日私に『風邪を引く』と言っていたその場所で、彼が寝たのだ。
それは風邪も引く。
大慌てで呼んだ医師は当然「風邪ですな」と診断を下した。
「なんでまた、こんなところでお休みに?」
そう尋ねられた彼は、
「俺が間抜けだったからだ」
と答えていた。
私は、自分を呪いたくなった。
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