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「カズマ様!こんなの危ないです!行かないでください……!」
私は彼に懇願した。
しかし彼は、「心配するな」と私の頭を軽く撫でる。
彼によると、秘策があるらしい。
そして、時期的にも今が最適だと。
協定を結ぶことは当然、この国や周辺の国々にとってマイナスな面もあるため、盗賊行為が小競り合い程度で済む間は、各自に注意を促す方が都合がよかったという。
だが、彼らはエスカレートしてきている。普通、警備も万全の王族を襲おうとは思わない。リスクも大きい。
しかしそれはつまり、向こうに余裕がないということで、彼らにも協定を結ぶ利点が生まれているということでもある。
彼はそう説明した。
頭では納得しても、不安が消え去るはずもない。
おまけに、彼はが向かうのは、ミサキ兄さまに大怪我を負わせた者たちのところなのだ。
私の手が震えているのに気付き、彼がそっと自分の手を重ねる。
そして、
「お前が望むなら、二日で帰ってくると約束する。もちろん、無傷でだ。――お前が帰って来いと言ってくれたら、俺は絶対に、約束を守る」
長年の火種を、二日で。
だけど、彼ならやってしまうかもしれない。
そして、それを成し遂げるために、私の言葉が必要だというのなら。
「カズマ様……、どうかご無事で、早く帰ってきてください」
そう言って、ありったけの勇気をふりしぼり、彼の頬に口づけた。
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