▼ 12:大丈夫
二番目の兄が盗賊に襲われ、かなりの重傷を負ったという報を聞いた時、私はちょうど、兄たちへの手紙を書いていたところだった。
二番目の兄は、私をとてもかわいがってくれていた。
父と上の兄は結婚式に来てくれたが、二番目の兄は留守番だったため、かなり長い間会っていない気がしていた。
「すぐに詳細が届くはずですので、お妃様にはおつらいかと思いますが、続報をお待ちください」
そう言って、兵士が部屋を出て行った。
「ミサキ兄さま……」
私の乗馬技術では、遠い故郷まで一人で走り切ることはできない。
それ以前に、立場上、勝手にここを飛び出すわけにはいかない。
足元がぐらつく感覚がした。
現実がどこにあるのか、掴めない。
―――その時。
「……っ、リン!」
ドアを勢いよく開けて、彼が飛び込んできた。
肩で息をしている。
それに、こんな時に、初めて彼に名前を呼ばれて、……こらえていたものが溢れ出した。
「カズマ……様……、ミサキ兄さまが……兄さまが……」
涙が、一度流れだすと止まらなかった。
がくりと膝から崩れる寸前で、彼の腕が、私を支えた。
「私、行かなきゃ……ミサキ兄さまが、死んじゃったら……」
涙声で訴える私を、彼が見下ろしている。
その目は、いつもとは全然違って。
「リン、落ち着け。次の情報は、遅くても一時間以内には来る。……もし、一時間経っても来なければ、俺がお前の国まで連れて行ってやる。だからそれまで待て」
切実な声と表情で、私にそう言う。
私は、なんとか頷いた。
prev / next
(1/2)