my beloved | ナノ


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「えええええっ!?お、お二人の間には、ま、まだ何も……ッ!?」

「ま、マリカさん、声が大きいですっ!」

私が、初夜に起きたことをマリカさんに打ち明けると、彼女は相当の衝撃を受けたようだった。


しかし、ふっと窺うように目を細めると、マリカさんは低い声で言った。

「……それで、リンさまは、まだ殿下のことをお好きではない、ということですか?」

「え……っと、」

口ごもる私に、マリカさんはさらに続ける。

「数カ月一緒にいて、殿下に、何の気持ちも持っていらっしゃらない、なんてこと、ありませんよね?」


「……だけどマリカさん、好かれたから好きになるなんて、なんだか失礼だと思いませんか……?」

私は、ここ最近考えていたことを、マリカさんに逆に尋ねた。

いつか自分が、好かれていることに甘えて、彼を好きだと錯覚してしまったら……と、少し不安になっている。

それは、あまりにも彼に対して都合がよくて……失礼なんじゃないかと。


すると、マリカさんは小さく吹き出した。

「リンさま、考えすぎですわ」

そして彼女は、やさしく私の手を取って言った。

「リンさまが初めて会ったときから、殿下はリンさまをお好きだったんです。

だからリンさまは『リンさまを好きな殿下』しか知りようがないじゃないですか。

それもひっくるめて、殿下自身を見て、気持ちを育てていかれれば良いと思いますわ」


「ひっくるめて……カズマ様自身を……」


マリカさんは、私を見て、またくすりと笑った。

「私思いますけど、『失礼』だなんてそんな言葉でストップをかけてらっしゃる時点で、殿下はけっこう脈ありですわね」

「えっ」

「ご心配なさらなくても、私が読んだ物語で政略結婚をした夫婦は、100%の確率で恋に落ちてましたわ」


楽しげに断言するマリカさんに、私は苦笑した。

「なんだかいろいろと違う気がするんですけど……」



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