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「私はね、似てないって言われるけど、ほんとはカズマとけっこう似てるんだよ」
「?」
唐突に話が逸れた気がして、私はきょとんとして首を傾げた。
「大事な子はベッタベタに甘やかしたい主義なんだ、本当は」
「甘やかし……?」
「奥さんは甘やかしてたしねー。いやまあ、それ以上に甘えてはいたけど」
いまいち話が見えなくて、何と言葉を返していいかわからない。
「もちろんリンさんのことも甘やかしたいんだけどね?かわいい娘だから」
「あの、陛下……?」
「でもリンさんの甘やかし担当はカズマだし、だからカズマの甘やかし担当もリンさんに任せたよ、って話、かな?」
「甘やかし、担当……」
楽しそうな表情でワインを飲み干した王様は、用意されていたデザートのチョコレートをつまんだ。
口に含んで『甘いねー』と笑う。
「二人ともまだまだ半人前だ。優秀だからって、一人前だとは限らない。だけどね、二人は夫婦だし」
もうひとつ、つまんだチョコレートを、王様が私の口元に差し出す。
躊躇っていると、チョコレートが唇に軽く押し当てられたから、私は慌てて口を開けた。
確かに、王様は彼と、似ているかもしれない。
彼が見ていたらどんな顔をしていただろう、と冷や汗をかきながら、私は王様が食べさせてくれたチョコレートを味わった。
王様の言うとおり、甘い。
「夫婦、だからね、離れなければ、いろいろ大丈夫だと思うよ」
王様がどんな思いでそう言ってくれたのか、ぜんぶを感じ取れている自信はなかったけれど――
「はい、陛下」
それでも私は、大きく頷いた。
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