my beloved | ナノ


▼ 


「私はね、似てないって言われるけど、ほんとはカズマとけっこう似てるんだよ」

「?」

唐突に話が逸れた気がして、私はきょとんとして首を傾げた。


「大事な子はベッタベタに甘やかしたい主義なんだ、本当は」

「甘やかし……?」

「奥さんは甘やかしてたしねー。いやまあ、それ以上に甘えてはいたけど」


いまいち話が見えなくて、何と言葉を返していいかわからない。


「もちろんリンさんのことも甘やかしたいんだけどね?かわいい娘だから」

「あの、陛下……?」

「でもリンさんの甘やかし担当はカズマだし、だからカズマの甘やかし担当もリンさんに任せたよ、って話、かな?」

「甘やかし、担当……」


楽しそうな表情でワインを飲み干した王様は、用意されていたデザートのチョコレートをつまんだ。

口に含んで『甘いねー』と笑う。


「二人ともまだまだ半人前だ。優秀だからって、一人前だとは限らない。だけどね、二人は夫婦だし」


もうひとつ、つまんだチョコレートを、王様が私の口元に差し出す。

躊躇っていると、チョコレートが唇に軽く押し当てられたから、私は慌てて口を開けた。

確かに、王様は彼と、似ているかもしれない。


彼が見ていたらどんな顔をしていただろう、と冷や汗をかきながら、私は王様が食べさせてくれたチョコレートを味わった。

王様の言うとおり、甘い。


「夫婦、だからね、離れなければ、いろいろ大丈夫だと思うよ」


王様がどんな思いでそう言ってくれたのか、ぜんぶを感じ取れている自信はなかったけれど――


「はい、陛下」


それでも私は、大きく頷いた。



prev / next
(4/4)

[ bookmark /back/top ]




「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -