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「その顔で言われても迫力がないな」
「その顔って、どんな……ひゃあああっ!」
彼の手が服の下に入れられて、肌を直接くすぐられる。
「誘ってるような顔のことだ」
「誘っ!?な、なにをですかっ!?」
むず痒さになんとか耐えながら声を上げる。
「そうだな、何を誘っているつもりなんだ?」
「だからそれは私が聞い……きゃあっ!」
明らかにからかいの態勢に入ってしまった彼に抗議しようとした瞬間、笑いすぎて涙のたまった目尻を彼がぺろりと舐めた。
「ゆ…ユキの真似……?」
「あんな雪だるまと一緒にするな」
「ユキの悪口言わな……っ、んんっ!」
黙らせるように唇を塞いだ後、彼は言った。
「犬のことはどうでもいい」
彼の手が、するりとスカートの中に滑り込み、ふとももの内側を撫でる。
くすぐったい――だけじゃない感覚に、私は焦った。
おかしい。
さっきまで、ただじゃれあうみたいにお互いをくすぐって遊んでいただけ、だったはずなのに。
「あ、あの、カズマ様……」
「何だ」
頬にキスを落としながら、手も止めないまま、彼は答えた。
「ど、どうしてこんなことに、なってるんでしょう……?」
「こんなこと、とは?」
「だ、だからその……なんだかちょっと、さっきまでと違う、ような、あの……」
恥ずかしさでうまく説明できずにいると、彼が空いていた手でもう一度、軽く首筋をくすぐった。
「……っ!」
「こうなった原因が知りたいのか?」
「はっ……は、はい」
床にはりつけになっている私を見下ろして、彼は無表情に口を開いた。
「ひとつめは、お前が俺にのしかかってべたべたと触り倒したせいだ」
「なっ……!誤解です、私はただっ……」
「好きな女に触られて平気な男なんていない」
平気な顔をしていたはずの彼は、いけしゃあしゃあとそんなことを言う。
「もうひとつは、お前が嫌だのやめろだの言うせいだ」
「い、意味がわかりません……!」
「お前のそういう台詞は俺には誘い文句にしか聞こえない」
「なっ……!カズマ様、耳を診てもらった方が……」
「これが病気だとして治す方法はない。だから必要ない」
わけのわからない言葉の連続に唖然としながらも、私の体温は勝手に上昇していく。
彼にももちろん、それはばれてしまうだろう。
だって、私に直接、触れているのだから。
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