my beloved | ナノ


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すると。

「…………くっ」


「!?」

なぜかこのタイミングで彼が吹き出したから、私は眉を吊り上げた。

「何がおかしいんですかー!くすぐってもずっと笑わなかったくせに!」


「いや、なんでそんなに必死なのかと」

何かがツボに入ってしまったらしく、珍しく彼は肩を震わせて小さく笑い続けている。


「……だって、何が楽しいのかなんて言うから……」

笑われたことがなんだか悔しくて、私は唇を尖らせた。


と。


「たぶん、こっちの方が楽しい」


「え?」

その意味を聞く間もなく、彼の手であっさりと床に仰向けにされてしまった。


いつもの無表情ではなく、意地悪な笑顔でもなく、楽しそうな笑みを浮かべた彼が、私の脇腹に手をのばす。


「あっ!だめ!カズマ様、待っ……きゃああっ!やだやだ!やめてください!あはははっ!やだあーっ!」

脇腹を指でなぞられるだけで身体じゅうがぞわぞわして、私は悲鳴を上げながら身をよじった。


「仕返しだ」

「仕返しって、カズマ様全然くすぐったがってなかっ……だめだめ!首だめです!や、やぁぁーっっ!」

「暴れるな」

「だってだって!ふふっ…あははっ!やめっ……きゃあああっ!」


まるでおもちゃで遊ぶこどもみたいに楽しそうに――そんな顔はめったに見ることはないのだけれど――彼は私を容赦なくくすぐり続けた。


「お前の身体は弱点だらけだな」

「そっ……カズマ様に弱点がなさすぎ、きゃああっ!やめてーっ!」

「そんなことはない」

「う、うそつき、ひゃああっー!も、もうだめですカズマ様、やめてやめて!やめてくださいーっ!」


じたばたと暴れると、彼がすっと手を引いた。


「は、はあ……」

笑い疲れた私は、ぐったりとため息をつく。


しかし、

「一番弱いのは、首だったか?」

「きゃあああーーーっ!」


油断したところを、また襲われた。


首筋を指先でなぞられて、逃げようと横向きになる。

すると、ぐいっ、と顎を掴まれて、視界が急に狭くなった。


「……っ!」

唇が重ねられて、すぐに息苦しくなる。

侵入してきた彼の舌先までもが、なんだかくすぐったいような気がして、私は彼の胸板をぐいぐいと押し返した。


しかたなく、といった風に彼が私を解放してくれたから、肩で息をしながら彼を見上げて睨みつける。

「わ、私で遊ばないでください……!」



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