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▼ 48:来訪者(2)


日が暮れる頃、彼が王宮に帰ってきて、彼と私は王様の執務室に呼び出された。


「今日のことを黙ってたらきっとリンさんから聞き出すだろうからね、それだと面倒なことになりかねないから、私が話すよ」


そう前置きして、王様は昼間のことを彼に報告した。


イリヤ王子がわざわざマリカさんを足止めしてまで私と二人きりになったこと。

私を『奪う』つもりがある、と言ったこと。

そして、西の国が、協力関係を申し出てきたこと。



「私たちにとっては、願ったり叶ったりだ」


王様の言葉に、彼は眉を潜める。


イリヤ王子の国とは、国交はあるけれど関係が良好とはいえない。

そしてこのところ不穏な動きを見せているとある小国との交渉を有利に進めるには、かの国の協力が不可欠だと会議でも言われていた。

しかし、こちらからそれを持ち掛ければどんな条件をふっかけられるかわからない、そんな意見も多く、私たちはずっと二の足を踏んでいた。

それを、あちらからほとんど無条件で協力すると言ってきたのだから、断る理由などなかった。


「もちろん、受けるね?カズマ」


王様の問いに、彼が苦々しい表情になる。

はい、と、答えなければいけない場面だ。

それでも、彼はそれを言わない。言えない、といった方がいいような顔をしている。


そんな彼を見た王様は、小さくため息をついた。


「あの子はただ、リンさんに私的に接触しただけだ」


彼が何か言おうとして口を開く。

しかし、それを遮るように、王様は言葉を続けた。

「そうだよ、カズマにとっては『だけ』なんかじゃないとわかってて、試してる。子供じみていて愚かだ。試していることも試す方法も」


そして王様は、彼の目を見据えて言った。


「だけどそれに振り回されて感情的になるのは、もっと愚かだ」


彼は、何かをこらえるような表情で、黙っていた。


「リンさんは何か不都合な要求をされたわけじゃない。交わされたのはあくまで私的な会話だ」

淡々と、王様が言い募る。

「聞いたリンさんが嫌な思いをした、それだけだ。『ちょっかい』と言っていたけど確かにそのとおりだね」


そこで王様は、ずっと腰掛けていた椅子から立ち上がり、彼の前に立った。


「カズマにとっては、それだけなんかじゃない、それはよくわかるよ。だからそこが問題だ」


窘めるような口調から一転して、王様は声を低くした。


「カズマにとって最大の、致命的といってもいい弱点はリンさんだ。ただ、それはカズマ次第で力にもなる、守りにもなる」


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