my beloved | ナノ


▼ 


「だ、だけどあんな近くで……べたべた触、……っ!」


最後まで言い終わらないうちに、掴まれていた腕を引かれ、彼に抱きしめられた。


彼は、私の背中を撫でながら、耳元で囁く。

「悪かった。これからはお前以外にはあんな風に触らせない」


体温がまた一気に上昇した気がした。


「そっ、そんなことしてほしいわけじゃ……」

「そういうことだろう?お前が言いたかったのは」

「……」


結局、心の奥の奥までぜんぶ、彼に見抜かれてしまっているから、私は何も言うことができなくなる。


「俺も同じだ。だから触らせない」

「……」


そんな簡単に言うけれど、そんなことはできるのだろうか。

けれどその言葉に、どうしようもなくどきどきしてしまっている私がいて、それがやっぱり悔しかった。



彼はしばらくそのまま私の背中を撫で続けていたけれど、この状況に耐えきれなくなった私は、解放してほしくて彼の胸を押し返した。

恐る恐る彼を見上げると、彼はまだ、笑っている。


「まさか妬かれるとは思ってなかった」


そんなことを言われる意味が、わからない。


「な、何でですか。だって私、カズマ様が大好きなんですよ……?それって、カズマ様を他の誰にも触らせたくないって、そういうこと、なのに……」


「ああ、悪かった」

「謝らないでください……私のわがままだって、さっきも言いました」

「お前に嫌な思いをさせた。おまけにさっきから、反省するどころか嬉しいと思ってる。だから悪かった」

「……っ!私、怒ってないんです、ほんとに。だから……」

「わかってる」

小さく笑う彼が、なんだか本当に嬉しそうだったから、私は恥ずかしくなって目を逸らした。


彼はベッドの端に腰掛けると、再び腕を引いて私を捕まえる。

膝の上に座らされて、頬を撫でられたら、私はもうどんな顔をしていいかわからない。

やきもちを妬いた後、という状況が、私をますますいたたまれなくさせた。



――と。頬に指をすべらせながら、不意に彼が口を開いた。


「好きなようにしていい」

「えっ?」


何を言われたのか理解できなくて、私は目をまるくする。すると、


「俺をお前の好きなようにしていいと言ってるんだ」

「好きなように、って……」

「俺がいつもしてるように」


「……っ!?」

その言葉に、一気にいろんな記憶が蘇る。おまけにそれを私に『しろ』だなんて。

「そ、そんな恥ずかしいこと私、できな……」


いきなりわけのわからないことを言われて混乱する私の手を、彼はやさしく握った。


「俺はお前だけのものだ。たまにはそれを、お前が俺に教えてくれ」


「教えるって……そ、それに、私だけのものなんてそんな贅沢なこと思ってな、」

「思っていい。俺も思ってる。――それはわかっているだろう?」

「……わか、って、るというか……」

「だから俺にもわからせてくれ」

「な……に言っ、……ひゃあっ!」


軽々と抱え直されて、彼の膝の上に馬乗りにさせられた。

向かい合わせで、私が彼を誘惑しようとしているかのような体勢。


事実、彼が要求しているのはそういうことだった。

prev / next
(2/4)

[ bookmark /back/top ]




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -