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「だ、だけどあんな近くで……べたべた触、……っ!」
最後まで言い終わらないうちに、掴まれていた腕を引かれ、彼に抱きしめられた。
彼は、私の背中を撫でながら、耳元で囁く。
「悪かった。これからはお前以外にはあんな風に触らせない」
体温がまた一気に上昇した気がした。
「そっ、そんなことしてほしいわけじゃ……」
「そういうことだろう?お前が言いたかったのは」
「……」
結局、心の奥の奥までぜんぶ、彼に見抜かれてしまっているから、私は何も言うことができなくなる。
「俺も同じだ。だから触らせない」
「……」
そんな簡単に言うけれど、そんなことはできるのだろうか。
けれどその言葉に、どうしようもなくどきどきしてしまっている私がいて、それがやっぱり悔しかった。
彼はしばらくそのまま私の背中を撫で続けていたけれど、この状況に耐えきれなくなった私は、解放してほしくて彼の胸を押し返した。
恐る恐る彼を見上げると、彼はまだ、笑っている。
「まさか妬かれるとは思ってなかった」
そんなことを言われる意味が、わからない。
「な、何でですか。だって私、カズマ様が大好きなんですよ……?それって、カズマ様を他の誰にも触らせたくないって、そういうこと、なのに……」
「ああ、悪かった」
「謝らないでください……私のわがままだって、さっきも言いました」
「お前に嫌な思いをさせた。おまけにさっきから、反省するどころか嬉しいと思ってる。だから悪かった」
「……っ!私、怒ってないんです、ほんとに。だから……」
「わかってる」
小さく笑う彼が、なんだか本当に嬉しそうだったから、私は恥ずかしくなって目を逸らした。
彼はベッドの端に腰掛けると、再び腕を引いて私を捕まえる。
膝の上に座らされて、頬を撫でられたら、私はもうどんな顔をしていいかわからない。
やきもちを妬いた後、という状況が、私をますますいたたまれなくさせた。
――と。頬に指をすべらせながら、不意に彼が口を開いた。
「好きなようにしていい」
「えっ?」
何を言われたのか理解できなくて、私は目をまるくする。すると、
「俺をお前の好きなようにしていいと言ってるんだ」
「好きなように、って……」
「俺がいつもしてるように」
「……っ!?」
その言葉に、一気にいろんな記憶が蘇る。おまけにそれを私に『しろ』だなんて。
「そ、そんな恥ずかしいこと私、できな……」
いきなりわけのわからないことを言われて混乱する私の手を、彼はやさしく握った。
「俺はお前だけのものだ。たまにはそれを、お前が俺に教えてくれ」
「教えるって……そ、それに、私だけのものなんてそんな贅沢なこと思ってな、」
「思っていい。俺も思ってる。――それはわかっているだろう?」
「……わか、って、るというか……」
「だから俺にもわからせてくれ」
「な……に言っ、……ひゃあっ!」
軽々と抱え直されて、彼の膝の上に馬乗りにさせられた。
向かい合わせで、私が彼を誘惑しようとしているかのような体勢。
事実、彼が要求しているのはそういうことだった。
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