my beloved | ナノ


▼ 40:お酒と名前


彼は今、王様と二人でお酒を呑んでいる。


王様もそれなりにお酒は強いけれど、彼はもっと強い。どれだけ飲んでも顔色ひとつ変わらない。

「酔わないなら飲んでもしかたない」と、普段はあまり自分から飲むことはない。

だけど最近はよく王様に誘われて、お酒を酌み交わしている。


私は一度、ジュースと間違ってお酒を飲んで、とんでもない醜態をさらしてしまったことがあり、それ以来一滴も飲んでいない。

だから今日も留守番だった。


親子でどんな話をしているんだろうか、なんてことを想像しながら、私はソファで彼を待っていた。



****



ガチャリとドアが開いて、彼が帰ってきた。

やっぱり涼しい顔をしている。

「おかえりなさいカズマ様、楽しかったですか?」

「ああ。父上が取り寄せたものすごく強いという酒を何杯も飲まされた」

彼は少しだけ眉をひそめて言った。

「あれは、酔いたい奴が酔うためだけに呑む酒だ。まずかった」


そんなことをいつもの顔色で言いながら、彼はベッドへ向かった。そしてどさりと腰を下ろす。

昼間も忙しそうだったし、少し疲れているのかもしれない。


彼に続いて一旦寝室に入っていた私は、水でも持って来ようと、回れ右をした。


すると、

「……おい、リン」


低い声で、名前を呼ばれた。


「はい?」

私は少しどきっとしながら振り返る。

彼はめったに私の名前を呼ばない。

彼が私の名前を呼ぶときは、そう……私が恥ずかしくなってしまうような雰囲気のときが多い。

もちろん、何の気無しに突然呼んだりもするのだけど。


彼は、自分が腰掛けたベッドの、右隣をぽんぽんと叩いている。

ここに座れ、ということらしい。

「あの、でもお水を……」

「大丈夫だ」

「は、はい……」


ちょこんと隣に座ると、彼はじっと私の顔を見た。

「……?」

無表情で見つめられているから、彼が何を考えているのか全然わからない。だけど勝手に心臓が速くなるから、落ち着かない。



prev / next
(1/3)

[ bookmark /back/top ]




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -