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▼ 35:恋愛小説の主人公


今日私たちは、他国の晩餐会に招かれている。

彼は国王の相手をしており、私は、付き添ってくれているマリカさんと共に第一王子に挨拶をすることになった。


「本日はお招きありがとうございます。王子妃のリンと申します」

第一王子は、にこっと笑った後、私の両手を握った。


「お妃様、聞いていた噂よりも数段お美しい方ですね!今夜は満月ですがその輝きすらかすむほど……いえ、満月のまばゆさが貴女の美しさと溶け合って、この場が夢のように煌めいている、と言った方が正しいでしょうね」

「は、はあ……ありがとうございます」

「貴女にカズマ殿下という夫がいなかったならば、私を含めここにいる男たちは全員、貴女に求婚しているでしょう。カズマ殿下は幸せな方だ。私は少し妬ましくもありますよ」

「は、はあ……」


一緒にいたのは半時ほどだったが、その間第一王子は、いかに私が素晴らしいかをあらゆる言葉で語り続けていた。


やっと第一王子から解放され、私は一旦会場から出ることにした。
一気に疲れてしまった。


「マリカさん、ここの王族の方って……あれが普通なんでしょうか」

げんなりしながら私はマリカさんに愚痴をこぼす。

昼間ここに到着した時、出迎えてくれた国王も「この世界中の宝石よりも美しいお妃様ですな」だなんて言っていた気がする。お国柄なんだろうか。


「素敵ですわ〜!」

同意してくれると思っていたマリカさんの、思いがけない言葉に私は耳を疑った。

「え、マリカさん……?」

「だってあの王子殿下、私が今読んでる恋愛小説の主人公にそっくりなことをおっしゃるんですもの!」

「あ、ああ……」

マリカさんは恋愛小説を読むのが趣味で、今回の遠出にも一冊持ってきていた。


「もちろん、見た目は全然違いますわよ!?見た目だけならカズマ殿下のような凛々しいお方、という設定ですから。こちらの王子殿下は…なんというか、多少、イモめいていらっしゃいますし……お二人を足して二で割ったら、まさにあの主人公なんですけれど」

マリカさんはさりげなく失礼なことを言った。臣下の不敬は聞かなかったことにする。

「えっと、それは……素敵ですね」

なんと言っていいかわからず、私はとりあえず同意しておくことにした。


するとマリカさんは、ぱん、と両手を合わせた。

「そうですわ!リンさまも読んでみてくださいな!ほんとに素敵ですの!」

「えっ、私はそこまで興味は……、」

マリカさんはすごい速さで本を持ってきてくれた。

「そろそろ、リンさまのご入浴の支度をしてまいりますわね。カズマ殿下もしばらくすればいらっしゃるはずですから、それまでお部屋でご休憩なさっててくださいませ」

つまりは一人で会場に戻るなということらしい。彼の過保護ぶりは相変わらず徹底している。


せっかくマリカさんが(無理矢理)貸してくれたので、今の間に読んでいようかと本をパラパラとめくりながら廊下を歩く。


すると、背後から聞き慣れた声がした。

「お前、こういうのが好きなのか」


振り返ると立っていたのは、もちろん彼だった。


「そ、そんなことありません!」

私は慌てて否定する。


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