my beloved | ナノ


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「っ!か…カズマ様!聞い……いつから聞いて……っ!」

私はあまりの恥ずかしさに動転しながら尋ねる。


「ユキに話しかけたところから」

「……さ、最初から?」

私は愕然とした。


「笑いをこらえるのが大変だった」


そう言ってわずかに口の端を上げるから、私はもう悔しくて恥ずかしくて、埋もれるようにユキに抱き着いた。

「うううう〜!私は一生懸命考えてたのにっ!やっぱりカズマ様は私にどきどきなんてしないんですね!」


「そんなわけがあるか。今も、お前の願望とやらを全部叶えないと仕事に戻れないと思ってる」

彼が意地悪な表情でそう言っているのは、顔を見なくてもわかる。


「……からかわないでください。それに私だけがどきどきしたいんじゃなくて、カズマ様をどきどきさせたいんですっ!」

ユキに抱き着いたまま振り返り、私は彼に悔しさをぶつけた。


すると、彼が無表情でこちらへ歩み寄った。

私の前にあぐらをかいて座る。
目線の高さが同じになった。


「今の台詞を殺し文句だと思うくらいには、俺はお前に翻弄されてるつもりなんだが」


無表情でそんなことを言うから、私は慌てる。

「ほ、翻弄!?まだからかってるんですか……わっ!」


最後まで言う前に、彼が私をユキから引きはがした。

腰と後ろ頭に手を回し、私を腕の中に包み込む。


「ほら、心臓、速いだろうが」

耳元に彼の心臓があって、鼓動を打っているのがわかる。

だけど――

「……じ、自分の心臓のほうが全然速くて、速いのかどうかわかりません」


精一杯、そう答える。


すると彼が笑った気配がした。


「そういうのがだいたい効いてるから心配するな」

「え、ええ……?」

意味がわからなくて、顔を上げて彼を見る。

全然わからないけれど、なんとなく、照れるようなことを言われたのはわかって――顔が熱くなっている気がした。


彼はそんな私を見て、意地悪な顔をした。

「今ここでお前の願望を叶えたら、俺の願望も叶えたくなるな。やっぱり後にするか」

「……あ、あの、」

それはどういう意味ですか、と尋ねようとしたけれど。


「その時は、ユキにじゃなくて俺に直接言え」

わざと耳元で囁かれて、私はもう何もしゃべれなくなってしまった。




しれっと立ち上がって部屋を出ていく彼の後ろ姿。

情けなく耳を押さえて座り込んだままの私。



「か、カズマ様の馬鹿ぁ……」

それが、私がやっと発した言葉だった。


結局、私だけがどきどきしているとしか思えない。

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