my beloved | ナノ


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「か、カズマ様、お、思ったより……きついですね……」

私は耐えきれず、弱音を吐いた。息が上がってしまっている。

観光客には広まらなかった理由がわかった気がする。
『旅の思い出』にしてはハードな道のりなのだ。ちょっとした山登りに近い。


彼はさすがに平然と前を歩いている。

「おぶってやろうか?」

私を振り返って立ち止まる。


「いいっ!いいです!歩きます!」

私はぶんぶんと首を振る。

でもこれだけの道のりを進んだ先にある岬なら、確かに御利益もありそうだ。



やっとの思いで森を抜けると、こぢんまりとした岬へ出た。

マリカさんの言う通り他に人はいないし、夕日にも間に合った。



――だけど。

「た……たかい……!」


ちいさい岬だけに、海からの風がまともに吹きつけ、足が震える。


そんな私の様子を見て、彼が意外そうな顔をした。

「苦手なのか」

「は、はい……」

へっぴり腰になりながら、情けなく頷く。


「よく来ようと思ったな」

「いや、ここまで高いとは思わなくて……それに、せっかくの新婚旅行だから……」

もはや中腰になりながら私が言うと、彼はあきれたような顔をする。

「たかが地方の言い伝えだろう」

「でも……」


そこで彼は、急にふっと笑った。

「怖いならつかまれ」

そう言って腕を差し出す。

「は、はい……」

いつもからは考えられないくらい強く、私は彼の腕をぎゅっと掴んだ。


彼につかまっていると、怖さがだんだんおさまっていくのがわかる。

普段はどきどきさせられっぱなしで忘れそうになるけれど、彼は本当はいつも、私に安心を与えてくれるひとだった。


震えが止まって、やっと景色を見る余裕が出てくる。

「……綺麗ですね」

「ああ」


まだ沈み始めたばかりの夕日が海に映って、海がオレンジ色に染まっていた。

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