▼ chap.14 王宮の異変
「しかし日夏どのは見れば見るほど秋吉どのにそっくりだな!」
「はあ……」
「目元が特にそっくりだ!」
「飛鷹王子、その、近いです、できればもう少し……」
「はは!早瀬どのはなかなかにやきもち妬きだな!」
日夏の家のリビングは、いつになく賑わっていた。
いつもは二人きりだが、今日は六人もの人間がここにいる。
――日夏の誕生日、つまり流星群が国全体を魅了していたその夜。
『飛鷹王子!?』
早瀬が叫んだ名前に、日夏は耳を疑った。
『早瀬、何言って……』
『王宮に何度か出入りした時に肖像画を見…拝見したんだ、間違いない』
言いながら早瀬は、深く頭を下げた。
慌てて日夏もそれに倣う。
しかし。
『堅苦しいのはやめだ』
そう言ったのは――なぜか日向だった。
『早瀬、ナツに痴漢行為をはたらこうとしたことも今日だけは大目に見てやる。面倒だからさっさと顔を上げろ』
『待て、痴漢行為って何だ!というか何でクロが許可するんだ!』
思わず顔を上げてしまった早瀬と目線の高さを合わせるように、青年――飛鷹(ひだか)王子はしゃがみ込んだ。
『早瀬どのとは、一度だけ会ったことがあるのだが、そなたは覚えていないだろうな?まだ幼かったから』
その言葉に、大きく目を見開いた早瀬は、確かめるように垂氷を見上げた。
『お前の祖父が一度、王宮にお前を連れて行ったことがある。大方次期当主をよろしくとでも言いたかったんだろう。お前はまだろくに喋れもしなかったが』
腕を組んで退屈そうに立っていた垂氷は、早瀬の視線に気付き、そう答えた。
『そうなのだ、その頃は私もまだ少年だったが、よく覚えている。何と言っても柾木どのの御子息だからな!』
柾木とは、早瀬の亡き父親の名である。
『柾木どのと秋吉どの、二人にまた会えたようで嬉しいぞ!』
そう言って、飛鷹王子は破顔した。
『……あの、飛鷹王子は、それだけのために、ここへ?』
そこで、ずっと黙っていた日夏が、おずおずと口を開いた。
すると、なぜか再び日向が偉そうに答える。
『そんなわけないだろ、ナツ。王子は俺たちに!特にこの俺に!助けを求めて来たんだよ!』
『助け?』
『まあ、こんな寒いとこじゃ風邪引いちまう。とりあえず家に帰るぞ』
『帰る……って、今日はおばあちゃん家に……それに汽車ももうないわ』
『ばっかだな、ナツ!こいつがいるだろ?』
そう言って、日向は得意げに垂氷を指差した。
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