星月 | ナノ


▼ 

「前に進めた、って、どんなことがあったの?聞きたいな」

日夏は興味津々なふりをして、さらに探る。今のはわざとらしくなかっただろうか。


「まだ、ほんとに小さな一歩なんです。僕はまだ何もしていない。……だから、何かを形にできたら、そのときは一番に、話を聞いてくれますか?」

秋津はそう言って日夏を見つめた。

「え、ええ、もちろん!」

日夏は、秋津の熱を帯びた視線には気付かない。


彼女の頭の中を占めていたのは、別のことだったからだ。

(もし、あの男が今、秋津くんに何かの形で関わっているのだとしたら、それは秋津くんを欺く形で、ってことじゃないかしら)

あの悪意に満ちた目とは対照的な、秋津の希望に満ちた表情。


それが何となく、嫌な感じだ。

日夏は、直感で動くタイプだ。
理論武装は得意ではない。

だから、はっきりした根拠はないけれど、何かが危険だ、そう思った。



しかし、秋津に直接聞き出せない以上、男の素性を知る術はなく、決定的な何かを掴むことはできなかった。



そしてそのまま、時間は過ぎていく。

日夏の周囲にこれといって変化はないまま、あの男が現れてから、一週間が経過しようとしていた。



***





prev / next
(4/15)

bookmark/back / top




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -