星月 | ナノ


▼ 

「早瀬、お前何で昨日タキのとこ行ってたんだ?黒星のことでなんかあったのか?」

「……クロ、何時だと思ってるんだ」

翌日の早朝、早瀬がまだベッドでまどろんでいる時間、いきなり部屋の窓から日向が入って来た。

そして挨拶もなく問いをぶつける。


早瀬は眠い目をこすって抗議した。

「昼間に来ればいいだろ?なんでこんな時間に……」

「気になったら早く目が覚めたんだよ、悪いか」

「悪いに決まってるだろ」

日向は悪びれる気配もないが、早瀬は目が覚めてしまい、しかたなく起き上がってベッドに腰掛けた。


「なんとなく、黒星って奴のあっさりした行動に違和感があってさ。凍瀧さんにもまだ注意しててもらおうと思ったんだよ」

事情を話すと、日向は顔をしかめた。

「お前が気にするってことは、あいつがナツに何かすると思ってるってことか?」

「いや、日夏に興味はなさそうだったから、むしろ秋津絡みで日夏が巻き込まれるのが心配なんだ」


日向は、納得の表情を見せた。
おせっかいは日夏の得意技だ。

「なるほどな。じゃあ、しばらくは俺も秋津をよく見とくか」

「頼む」

早瀬が答えると、日向はふいに苦々しい顔になり「ところでなあ……」と低い声で切り出した。


「お前、ナツに何しやがった?」

「え?」

早瀬はぎくりとする。
『何』と言われれば、帰りの列車でのことを思い出す。

垂氷がばらすはずがないが。

日向は、逡巡する早瀬には気付かず、さらに問いかけた。

「ナツがお前にだけ、あからさまに変だ。まさか手出してないだろうな!?」


そっちか、と早瀬は内心ほっとする。

「手を出せるわけないって言ったのはクロだろ?日夏がおかしい理由は、俺が教えてほしいくらいだよ」

完全に『手を出してない』と言えるかは微妙だが。


日向は舌打ちをし、「とにかくナツになんかしたら殴るからな!」と釘を刺し、さっさと帰っていった。


「……朝から騒々しい奴だ」

早瀬はため息をつくと、少し早い身支度を始めた。


ここのところ、モヤモヤとはっきりしないことばかりで、調子が狂う。

日夏が笑ってくれたらそんなのは吹き飛ぶのに、と思うけれど、日夏もモヤモヤの理由のひとつだから困る。


とにかく、こういうときに、思いもかけない事態が起きたりするのだ。

気を引き締めておこう、と早瀬は自分に言い聞かせた。



***





prev / next
(2/15)

bookmark/back / top




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -